090 急性硬膜下血腫7 なんでオレなの

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 更新が遅れてしまいまして申し訳ありません。またもや本業に潰されそうになっておりました。

 アクセスを続けてくださっていた方々、励ましのメッセージをくださった方々、真面目な質問をくださった方、ありがとうございました。(※質問の回答は第30話の記事の最後の方に書かせていただきました)

 引っ張りすぎですがやっと執刀開始直前まで来ました。こんな状況だととにかくまあ自分がやるしかないです。救急部のベテランの先生といっても脳外科の技術をしっかり持っている人はむしろ少数派なので、そういう先生からすれば来てくれたのが新人脳外科医であったとしても頼りにして乗っかるしかないのです。

 自分も自信がないのに他人から頼られている雰囲気になるのは非常に恐ろしいものです。

 さて細かい所の解説ですが、まず2コマ目で看護師の石川さんがピンセットで開封しているのは、滅菌された手術器械のセットです。金属製の平べったいカゴに器械が入っていて、布(丈夫な紙みたいな布)に包まれた状態で滅菌されています。内部を不潔にしないよう、清潔なピンセットで開封しているわけです(もしくは布の内側に触らないように手で開けます)。

 3コマ目のリドカインは局所麻酔薬(注射薬)の一番メジャーなヤツです。医療業界では%をドイツ語Prozentからとって「プロ」と呼ぶ習慣があります。1%を「いちプロ」という風に。もちろん「パーセント」でも通じます。

 エピネフリン(アドレナリン)は局所麻酔薬と混ぜて皮下組織に注射すると、皮膚の血管を収縮させることにより切開時の出血を減らす効果があります。

 細かな違いですが今回は滅菌手袋をしたその上からガウンを着ています。手術室ではふつう「清潔手洗い→滅菌手袋装着→ガウンを着る」の順番です。しかし救急外来での緊急手術では、

・清潔度よりもとにかく早く処置に入ることを優先する(※清潔手洗いは5~10分かかりますが、軽い手洗いと手袋装着だけなら1分以内に終わります)
・清潔手洗いできる設備(定期的に滅菌されている蛇口や滅菌済みタオル)が救急外来に設置されていない

等の事情でこのような手順になっていると思われます(先輩医師から聞いた話で、きちんと論文などで調べたわけじゃないので詳しい方いたら教えてください)。

 ただし、手術用ガウンの袖口のリブになっているところは水分が簡単に染み込んで来ますので、何かと不潔になりやすいという問題もあります。

 以上、長文になりましたが解説いたしました。次回はやっとメスが入りますのでご期待ください!