069 はじめての開頭手術21 その罪は重い

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 切り取っていた骨を骨弁(bone flap)と呼びます。骨弁にあらかじめチタンプレートという金具を取り付けておき、元の位置に戻します。残りのネジ(スクリュー)を締めこんで骨弁をがっちりと固定します。

 また、骨弁の中央部あたりにも小さな穴を開けておき、第68話で登場した「硬膜の吊り上げ」という操作をここでも行います。Central tentingとも呼ばれるこの操作を行っておくことで、骨弁と硬膜の間にできてしまう空間をある程度小さくすることができ、術後にこの空間に出血がおこる(硬膜外出血)可能性を減らすことができます。

 ただネジを締めるだけなのですが、最初のころは意外と難しいです。変な力が加わると今回の漫画のようにネジがどこかに飛んでいってしまいます。最悪の場合、ガッとなった瞬間にドライバーが骨の隙間から脳に刺さるというケースもあるそうです。

 ネジを落としてしまうと外回りの看護師さんは全力でネジを捜索するハメになります。ネジの行方が分からない場合、患者さんの体内にネジが紛れ込んでいるかもしれないからです。手術中にネジや小さな針を落とすと結構重罪です。 

 高精度の医療機器であるため、チタンプレートは1個が1~数万円、ネジは1本が数千円と非常に高価です。実際に弁償させられた事はありませんが、私もネジを落とした時は怒られました。

 ちなみに、チタンプレートやネジは基本的に皮膚の下に一生いれたままです。プレートの凹凸が皮膚の上から目立つなど、どうしても美容上問題がある場合は後ほどプレートを除去するための手術を行うこともあるそうです(患者さんが希望した場合)。