055 はじめての開頭手術9 教育者モード

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 たまにこういう先輩いますよね。「教えてやろうと思ってたのによ」みたいな感じの。かといって正しく答えられないと「何だよそんなのも知らないのかよ」とバカ扱いされます。また、同じ先生でもその日の気分次第で「おおーよく知ってるなあ!勉強してんなあ!」と褒められることもあるので難しいものです。

 どの科においても手術中は指導医から口頭でのテストをよく投げかけられますが、とりあえず普通に知っていることを解答するのがいいと思われます。また、ひとりの先生が投げかけてくる質問はだいたいパターンが限られていますので、先輩ドクターや同期ドクターにあらかじめ聞いておくといいかもしれません。

 実際エラい先生達は手術で犯しやすいミスや専門医試験で頻出のポイントをよく知っていて、それを後輩に質問してくることが多いので、それらをしっかり勉強しておくことは自分の将来のためにもなると思います。

 硬膜剥離子(こうまくはくりし)は名前の通り、骨の裏側の硬膜を剥がすために使われる細いヘラです。ドイツ語でスパーテル(Spatel)と呼ぶ先生も稀にいます。バーホール同士をドリルで切ってつなげる際に硬膜まで一緒に切ってしまわないようにするため、頭蓋骨の裏に貼りついている硬膜をしっかりと剥がしておく必要があります。

 この際、硬膜や脳を傷つけないのはもちろん重要です。加えて、開頭に関係のないところまでむやみに剥離しないように注意しなければなりません。第10話の解説文でも触れましたが、骨と硬膜のスキマからはジワジワと出血が起こってきます。しかもその部分の出血を止めるのは意外に面倒な操作です。ムダな出血をさせない配慮が必要です。

※スパーテルは英語ではスパチュラ(spatula)のことで、これは単に「ヘラ」の意味です。英語やドイツ語の医療機器のホームページをみると硬膜剥離子はDura Spatel、Dura Dissektor、dura spatula、dura dissectorなどと書いてありました。 dura=硬膜