033 みんなでVPシャント術⑦ 腹膜切開……

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こんな風に後輩をおどかす先生もよくいます。単純にビビらせて楽しむのが目的の先生もいれば、他人の失敗談を教訓にして指導してやろうという親心を持った先生もいます。いずれにせよ、伝説的な大失敗をした先人達のエピソードは医局内で語り継がれます。

腹膜を切開する際に一番怖ろしいのはすぐ下の腸管も一緒に傷つけてしまうことです。損傷した腸の修復はふつう脳外科医には無理ですので、すぐに外科の先生を呼んできて修復してもらうことになります。幸運にも私はやらかしてしまったことはありませんが、毎回怖ろしいです。

腸管を切らないためには、上にも描きましたが腹膜だけをつまんでいることをキチンと確認しなければなりません。私が習った方法は、切る前にとにかく2本の鑷子(ピンセット)で何度も腹膜をつまみ直すというものでした。もし腸管をつまみ挙げていたとしても、何度かつまみ直しているうちに下の方に腸が落ちるそうです。ホントなんでしょうか。

無事に腹膜だけを切開できたら、その縁をミクリッツ鉗子(かんし)でつまんで持っておきます。さらに縁の部分に絹糸(けんし)をかけて巾着袋の口のような状態にしておきます。これを巾着縫合と呼びます。その口からシャントのチューブを腹腔に差し込んだ後に、絹糸を結んで巾着の口を閉じてしまえばぴったりと穴を塞げるという寸法です。「3-0」は糸の太さの規格のひとつです。

※前話に関して質問をいただきましたが、腹部の操作は筋肉だけでなく皮下脂肪も結構ジャマになります。皮下脂肪が分厚い人は術野の奥行きが深くなってしまい非常に手術がやりにくいです。他にも肥満だと麻酔管理が難しくなったり、術後の合併症も増えたりするのでなかなか大変です。