頭の皮膚や皮下脂肪(部位によっては筋肉もあります)の下に、骨膜という膜があります。これを骨から剥がすために使う道具がラスパトリウム(raspatorium)、略してラスパです。 頭蓋骨の表面をゴリゴリと削るようにして骨膜をはがし、骨膜ごと皮膚をぐいっと開けば後々の作業のためのスペースができます。
前回も読んだ方は「メスだってじゅうぶん凶器じゃん!」と思われるかもしれません。が、しかし、メスは所詮小さな薄っぺらい刃物です。これに対してラスパトリウムは肉厚の金属製のヘラです。カッターナイフとバール(工具)くらい違います。私の画力がアレなせいで伝わりにくいかもしれませんが、ラスパトリウムはけっこう凶悪な器具です。
また使い方に関しては、メスと同様に思い切りが大事です。中途半端な力では骨膜がズタズタになってしまいますので、それこそ頭蓋骨が削れてしまうんじゃないかってくらいガリッ!ガリッ!と剥がします。仮に麻酔なしで手術されたとしたら、メスで切られるよりこっちの方が痛いんじゃないか…と思っています。