005 はじめてのオペ② 皮膚切開

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 慢性硬膜下血腫の手術(穿頭血腫除去術)では、頭の皮膚をせいぜい長さにして5cmくらい切開するだけです。一回に切る量が少なすぎると、同じ所を何度も繰り返し切らなければ十分に術創(傷口)を開くことができません。するとどうしても傷の断面がガタついてしまい、傷跡が汚くなりやすいです。
 理想としては一太刀で必要十分な深さ、長さまで切るのがよいそうですが、なかなか難しいです。切り始めと切り終わり(傷の両端)は特に傷が浅くなりやすいです。 

 器械を手渡してくれる看護師さんを「直介(ちょっかい)」もしくは「器械出し」と呼びます。私はここに描いたように、器械出しさんに対して「〇〇ください」と言ってしまいます。新米の医者としてはドラマのように「メス!」などとは言いづらいです。いきなり言える人もいますけど。

 ただし、ぶっきらぼうに「メス!」、「ペアン!」などと言う医者が必ずしも偉ぶっているわけではありません。器械の名前の後に余計なセリフがくっついていると聞き間違いが起こりやすくなります。長時間の手術で何百回も長いセリフを言ってると単純に疲れてしまう、という側面もあるようです。「手術している部分に全力で集中しているときに長いセリフを吐きたくない。というより手術中は術者に一言も喋らせないように先読みして器械を渡してほしい!」と言っている先生も現実にいます。

 局所麻酔の手術では指導医も下っ端の医者を思いっきり罵倒することはできません。意識のある患者さんにそんなのが聞こえると不安になってしまいますので。口では優しく言いながら睨みつける、ヒソヒソ声で叱りつける、など色々な指導法があります。足を踏みつけたり蹴ったりするアグレッシブな先生もいるそうです。 もちろん本当に優しく諭してくれる先生もいますが。