004 はじめてのオペ① 手洗い

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 最初の手術の直前は死ぬほど緊張してました。手洗いしながら手術の流れを頭のなかで必死にシミュレーションしてましたが余計に緊張しました。
 慢性硬膜下血腫というのは、頭をぶつけたりした後にちょっとずつ脳の表面に出血が起こり、1~2ヶ月後にパンパンに溜まった出血(血腫)が脳を圧迫して様々な症状がでる病気(というか外傷?)です。高齢者に起こりやすいです。
 症状としては片麻痺(左半身もしくは右半身の麻痺)、頭痛・嘔吐、認知症、意識がぼーっとする(意識障害)、意欲の低下などが出てくる可能性があります。
 手術は上にも書いた通りですが、まずちょっと皮膚を切ってドリルで頭蓋骨に1円玉くらいの小さな穴(バーホール)を開けます。骨のすぐ下にある硬膜という膜と、血腫を包んでいる血腫外膜を切開すると、中に溜まっている血腫が流出してきます。血液といっても古いものなので、赤というよりは茶色~黒の液体が流出してきます。その血だまりの中に細い管(ドレーン)を差し込み、そのまま皮膚を縫い閉じれば手術は終了、というのがおおまかな流れです。
 基本的にこの手術は局所麻酔(切る部分の皮膚だけに注射で麻酔をする)なので、患者さんは手術中もずっと意識があります。おおっぴらに弱音を吐くと患者さんに聞こえて不安にさせてしまいます。
 ちなみに手術前に手を洗う際には、指先から肘くらいまでスクラブ剤という液体石鹸で(さらにブラシも使ったりします)ゴシゴシと2回洗いますが、この際に肘よりも手を下に降ろしてはいけません。手術の際は清潔(=滅菌済み)と不潔(=滅菌していない)を厳密に区別しますが、指先は一番清潔にしておかなければならないからです。半分不潔といってもいい肘の方からつたってきた水が指先に付くと不潔になってしまうので、手洗いの最中は肘を下げて指先を上げた姿勢を保ちます。その後も清潔な指先を何かに接触させたりして不潔にしたくないので、手先を上げた独特のポーズでオペ室に入ります。
 医療ドラマや映画の中でオペ前に手先を下げた状態でバシャバシャ洗ってたりするのは基本的には誤りです。
 また最近では、水とスクラブ剤で1回予洗いをした後に消毒剤を何度か手に擦り込むだけで消毒完了とする、という方法も多く行われるようになってきています(ラビング法)。

文章が長くなってしまいましたが、次回も手術の話が続く予定です。