切り取った骨の事を骨弁(bone flap)と呼びます。エレバトリウム(略してエレバ)という先の丸いヘラを使ってテコの原理で持ち上げていくと骨弁を取り外せるのですが、この際にいきおい良くやると骨弁が吹っ飛んでいく可能性があります。
しっかりと手を添えてジワジワと骨弁を浮かせていかなくてはなりません。また、剥がしきれていない硬膜が骨の裏側にくっついていますので、硬膜を傷つけないように剥がす操作も必要です。
この骨弁ですが、手術の終わりに再び頭の中に戻してチタン製の金具で固定します。ですので骨はきっちりと清潔(菌のいない状態)を保っておく必要があります。今回のように雑に渡そうとして手を滑らせるなんてもってのほかです。
もしも骨を落として不潔にしてしまった場合、オートクレーブという器械で高圧蒸気により骨弁を滅菌すれば再使用することができます。
しかし、骨弁をオートクレーブで滅菌してしまうと、骨の内部にある細胞が全て死んでしまいます。いわば「死んだ骨」になってしまいます。このような「死んだ骨弁」は元の位置に戻してあげたとしても周囲の骨とうまくくっつかなかったり、長期間が経過するとだんだん分解されて溶けてしまったりする、と言われています(※この辺は諸説あります) 。
しかし骨弁を滅菌してから頭に戻すこともよくあります(長く体外で骨を保存しておいた場合など)ので、滅菌が絶対ダメというわけではありません。とはいえなるべく「生きた骨弁」を戻してあげるのが理想的と思われます。