047 はじめての開頭手術1 未破裂脳動脈瘤

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 励まそうとして的はずれな事をしてしまったエピソードです。脳の動脈にできた瘤を脳動脈瘤といい、それが破裂するとくも膜下出血という非常に危険な病気を発症します。しかしクリッピング術を行えば破裂しない状態にすることができます。

 UCAS Japanという大規模な統計の研究によれば、1cm以下の未破裂脳動脈瘤の手術において何らかの合併症(例えば脳梗塞とか脳出血、神経の障害などです)が起こる可能性は約3~4%、手術により死亡する確率は1%未満とされています。

 全く合併症を起こさず退院していく数ミリの未破裂脳動脈瘤の患者さんばかりをたくさん見ていると、どうしても「まあ、ほとんどの方は何も起こらずに元気で帰っていきますよ!そんなに不安にならずにいきましょう!」というノリで患者さんを安心させてあげたい気持ちが出てきていました。

 しかし事前に遺書を書いている患者さんを目の当たりにしたとき、「たった1%未満の死亡率でも、一度起こってしまえばその患者さんにとってはそれが全て」という当たり前の事を強く実感させられました。 指導医の先生がしつこいくらい術前にリスクを説明するのも当然のことだったのだと。

 とはいえ、私が明るく軽いノリで接していた患者さんが手術後に退院するときに「先生が『大丈夫ですよ~』って顔でニコニコしてたから安心できました」 と言い残していったこともありました。あまり悲壮感を出さずに接して患者さんを安心させてあげることも医者の役割なのかもしれません。

※メッセージで質問いただいたのですが、 私は基本的に家で比較的ヒマな時に漫画を描いています。当直中の空き時間にもときどき描きますが、夜更かしして描いた後に前話のような不穏患者や急変が出ると睡眠時間がなくなって死ぬほど後悔します…。