局所麻酔(局麻)の手術では患者さんは手術をされながらも意識があります。こんな風にビビって大声を出してはいけません。
慢性硬膜下血腫は外傷により頭蓋骨の内部にじわっと出血してそれが1~2ヶ月かけてパンパンに溜まったものです。頭蓋骨内にはもともと脳がぴったりと収まっていますので、そこに新たに血だまり(血腫と呼びます)ができれば内部の圧力はすごく高くなります。ぎゅうぎゅうの満員電車のような状態です。そのせいで、頭痛、嘔吐、意識障害、、、などの頭蓋内圧亢進症状という症状が出てきます。高齢者は若い人に比べて脳が縮んでいるので、そのぶん頭蓋骨と脳の隙間が大きく、血腫が溜まりやすいです。
頭蓋内圧が非常に高い場合は、メスでちょっと血腫の膜を切開しただけで血腫が噴出してくることがあります。結構ビビリます。しかしあまりモタモタしているとどんどん血腫が流れ出て、頭蓋骨の内部に空気が入ってしまいます。空気が頭蓋骨内部に入ってしまった状態を気脳症といいますが、空気がたくさん入っていると慢性硬膜下血腫が再発しやすくなると言われています。ですので、なるべく空気が中に入らないように急いでドレーンという管を差し込んで穴をふさぎます。手術の後に、ドレーンから一晩かけてゆっくりと血腫を外に流出させます。
もっと大きく膜を切開しておき、血腫の中にドレーンを差し込んでそこから水(生理食塩水や人工髄液)を流し込み、頭蓋骨の内部を洗浄するという方法もあります。内部から流れ出てくる水が透明になるまでしっかり洗います。この場合も、ドレーンは差し込んだままで傷を縫合し、一晩かけて中の水を流出させます。
「頭蓋骨に穴が開いたままで大丈夫なんですか!?」という質問を患者さんからよく頂きますが、だいたいの施設ではドレーンを差し込んだ後、バーホールキャップというものでバーホールに蓋をしてから傷を縫合して手術を終えます。骨と同じような成分でできた小さなキャップです。このキャップにもドレーンがやっと通るくらいの数mmの切れ込みが入っており、その部分は頭蓋骨に開いた穴として残ってしまいますが、普通はそこから何かが脳に刺さるということは考えづらいので心配ないと思います(そもそもバーホールキャップすら使わない、という先生もいます)。